大きな数字、されどそれは数字だ。

2012年に、電通ダイバーシティ・ラボが、約70,000 人を対象にスクリーニング調査を実施した結果から算出された「5.2%」という数字が、日本におけるLGBTの数とされ、現在に至るまでの通例だあり、ビジネスにおける一定の指標となっている。

5.2%という数字をどう捉えるか?現在の消費税率8%よりは低く、その他、非LGBT当事者が94.8%も占めていると考えると、数字としては小さく見える。でも、左利きの人と同じぐらいの割合だとか、クラスに1人か2人はいたんじゃないかな?なんて伝え方をすると、案外多いという印象を抱く場合も多い。単純に日本の人口を1億2千万人だとすると、600万人はその対象者であるという計算となる。ここからは細分化の作業だ。年齢、性別、地域などからLGBTを分別し、ビジネス転化可能な数字かどうかの根拠を探る。

その推計市場規模は……アメリカで約77兆円、イギリスで約7兆円、そして我が日本でも約6兆円で、世界全体では軽く100兆円を超えるとされる。今、世界のビジネス界でもっとも注目を集めているのが、LGBT市場なのである。

100兆円市場! 我らの隣人「LGBT」を見よ セクシュアル・マイノリティを学んで儲ける【上】:PRESIDENT Online - プレジデント(2014年5月19日)

 

ゲイ・マネーが英国経済を支える!? (新書y)

ゲイ・マネーが英国経済を支える!? (新書y)

 

 

LGBT市場は大きい。今でもそう思っているし、そう思い続けたい気持ちもある。しかし、これは日本のLGBT消費者による年間消費は5.7兆円、もしくは、6.6兆円だったりするだけであり、これが直接的に何かのビジネスに流用できる数字かどうかは不確定なままだ。普通に生活している上で、幾らかの余剰財を自分自身のために使用しているだけとも言えるわけだ。

ニューヨーク州同性婚を認める州法が成立してから約1年が経つが、ニューヨーク市では過去1年間で8000組以上の同性カップルが結婚し、その経済効果は2億5900万ドル(約202億円)に上るという。市当局者が24日明らかにした。

同性婚の経済効果、NY市では年間200億円以上 | 世界のこぼれ話 | Reuters (2012年07月25日)

 

このように、法整備などによる新しい消費の創造はもちろん可能であるし、現実的に経済効果は表れている。しかし、日本はまだ法整備されてないのが現状だ。LGBTとは、ライフスタイルそのものであり、いわゆる「オタク文化」に起因するアキバ市場とは大きく概念が異なる。

僕は少なくとも数字に踊らされていたひとりだと思う。踊らされたという言い方はふさわしくない。言うなれば、現状の指標として数字を過大評価しようとしていた。しかし、この数字を例えば、経済を支えるまでの市場経済までに発展させていくためには、お国柄、文化の質の考察、そして、マジョリティとされる非LGBT当事者への理解促進が欠かせない。無論、法整備もそのひとつだ。安易に並ぶ巨大な数字の本質に向き合うことと、LGBT当事者の本質に迫ることはイコールだ。多様性を理解することの深さが、未だにこの数字を「まな板の鯉」にしているひとつの要因だと思っている。ふわふわと掴み所のない数字と、企業はどう戦っていくのだろうか?何よりも明確なベクトルが必要なのは事実だろう。

 

アキバが地球を飲み込む日―秋葉原カルチャー進化論 (角川SSC新書)

アキバが地球を飲み込む日―秋葉原カルチャー進化論 (角川SSC新書)