未知から生まれる恐怖、葛藤、そして偏見。

未知なるものは、誰にとっても恐怖であり、脅威となる。見ない未来の話や、死んだ先の世界も未知である。きっとそこに何があるのかがわかれば善処できる。そういうものだ。HIV(ヒト免疫不全ウイルス)を含むSTI性感染症)全般はまさにそれだ。病気の根治という課題もあるが、調べるというプロセスを踏まなければ、自分自身にとって依然として未知のままである。「先日、SNSで知り合った人とセックスした」とか、「過去に数人と性交渉してきたが、もしかして・・・」などと、悶々と過ごす時間はまさに未知との戦いである。未知を放置している状態や、未知を解明するための検査結果待ちの時間は、恐怖のピークだと言える。

 

HIV(ヒト免疫不全ウイルス)は、免疫力を破壊するウイルス。なんでも男性同性間の性的接触感染が70%以上を占めるそうだ。厚生労働省が設定する「個別施策層(HIV感染の可能性が高いと予想されつつも、予防のための知識・行動へのアクセスが様々な理由で困難な人々)」には、男性同性間の性行為群も含まれている。

 

The Grindr Effect? Gay Men Again Battling Increasing STI Rates | The New Civil Rights Movement 突発的な出会いにおいては、それに見合うリスクヘッジは必要です。

 

エイズは女性にとっても他人事じゃない無料・匿名でHIV検査を受けよう(2014年05月26日)http://wotopi.jp/archives/5099 ウートピ the woman topics

  

「行政がホモの指導をする必要があるのか」兵庫県議会議員・井上英之氏による発言だ。同性愛は「社会的に認めるべきじゃない」「偏った性嗜好」等とした上で、県内のHIV感染予防啓発活動は「行政が率先して対応する必要はない」と述べた。発言撤回の予定はないとする井上県議に対し、オープンリーゲイである豊島区議員・石川大我氏などから抗議の声が出ているが、今回の発言が抱える問題点は同性愛者への差別だけではない。HIV/エイズに対しての無理解もまた露呈してしまった形だ。

 

このニュースは、そもそも公の人間として人格を問われているケースであり、深く言及はしない。しかし、偏りが生まれる風土は多く存在している。個人の未知は、自らとの戦いだ。ハイリスク層であろうがなかろうが、未知という局面を克服しなくてはならない。もう一方の未知は、良くも悪くもこの社会がグルーピングによって成り立っているという視座だ。マジョリティとマイノリティと区分した場合、マイノリティはマジョリティによって未知であり、その逆も然りだ。どの場面を切り取っても対立軸が存在している。この二重の未知が話をややこしくする。

 

まず、調べよう。未知のまま放置することは、それを肥大化されることであり、パートナーを傷付けることにも繋がる。僕はキッカケがあって受動的に調べた。結果が報告されるまでの数日、過去のいろんなシーンを回顧しながら、自分自身の保身に努めた。凄く嫌な時間だった。いや、苦しかったという表現が妥当だろう。しかし、未知が解消されると共に、視界が広がった。見えざる恐怖がなくなる瞬間は、自らの心に大きな余裕を与えるものだ。

 

LGBTHIVは一対で語られることが多い。安倍昭恵さんにインタビュー@東京レインボーパレード | 8bitnews にあるように、4月27日に東京・代々木公園で行われたLGBTレズビアン・ゲイ・バイセクシュアルトランスジェンダー)の権利向上を訴える「東京レインボーパレード」に、安倍昭恵首相夫人が参加していた。そして、沿道のLGBT層だけでなく、世界のメディアから注目された。

 

安倍昭恵首相夫人、ゲイパレードに参加。大歓迎される | 日刊SPA! (2014年6月3日)

 

「UNAIDS・ランセット委員会(HIVエイズの問題に取り組む国際機関)の委員に就きまして、ここ数か月エイズの問題に関わってきました。そこでLGBTの方々にお世話になり、このパレードのことも知りまして。ぜひ、私も参加したいと思ったんです。世の中にはいろいろな方がいらっしゃる。それぞれの多様性が尊重される社会が理想だと私は思っています」昭恵夫人をパレードに誘ったHIVアクティビストの長谷川博史さんは「昭恵さんがフロートの上に乗ると大きな歓声があがり、沿道の多くの人たちが手を振って大歓迎してくれました」と語る。

 

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6月は「東京都HIV検査・相談月間」です。6月1日〜6月7日は「HIV検査普及週間」としてキャンペーンとして検査の普及が促されました。そして、12月1日は「世界エイズデー(World AIDS Day)」です。世界レベルでのエイズのまん延防止と患者・感染者に対する差別・偏見の解消を目的に、WHO(世界保健機関)が1988年に制定したもので、毎年12月1日を中心に、世界各国でエイズに関する啓発活動が行われています。「共に生きる」象徴であるレッドリボンを数多く見かけるその日までに、まず自らの未知を取り除くよう、検査機関に足を運んでみてはいかがですか?(自宅でできる・匿名でできる検査キッドも充実しています。)

 

≪デメカル血液検査キット≫「HIVセルフチェック」 男女兼用

≪デメカル血液検査キット≫「HIVセルフチェック」 男女兼用

 

  

性病検査キット6項目 男性用

性病検査キット6項目 男性用

 

  

少しだけ、僕のことを語りましょうか。

少しだけ僕のことを語りましょう。

 

生物学的・社会的性別、性的指向、もしくは、性同一性に関しては、オスであり、男であり、ヘテロセクシャルであり、シスジェンダーだろうと思います。いわゆるストレートです。性的(セクシャル)マイノリティーズという括り(表現)は苦手ですが、他に表現すべき言葉がないこと、あえて言葉にすることで、その認知や市民権を得ることに大きな意味があると考え、積極的に使っていこうと思っています。

 

なぜ、セクシャルマイノリティーズについて語るかと言えば、それは至極な簡単な動機です。ゲイ、レズ、バイセクシャルトランスジェンダーの人達と接点を持ったことに由来します。もともと、差別や偏見は好みませんが、例えば、世界有数のゲイタウンとされる「新宿2丁目」というワードそのものに抵抗を持っていたぐらいです。それは単純に僕の介在するコミュニティではないという考えに基づくもので、同属意識を持った者が集う恒久的(もしくは一時的)な楽園がそこにあるのであれば、それはそれで素敵じゃないかという放任めいた捉え方でもありました。無論、定義付けされる(社会的にしている)ところから始まると、どう振る舞えばいいのか?などコミュニケーション方法について試行錯誤することはありましたが、触れ合えば触れ合うほどに、空気的な違和感はなくなります。経験値に基づくのであれば、これが認知であり、理解するということです。もちろん、そこには理解されるというプロセスも必要です。仮に無縁の存在だった者が、何かのキッカケで近しい者に変貌する。リアルであるほどにわかることは多いのです。それはストレートとストレートの関係にも言えることですよね。LGBTという括りへの認知、そして理解促進は、何かしら提言していきたいと考えています。

 

新宿2丁目発!LGBTポータルサイト「2CHOPO(にちょぽ)」では、2014年4月21日〜5月9日までの期間で、読者アンケート(リアルなあなた、教えて下さい!)が行われており、5月28日にその回答結果は公開されています。(この数字については今後も分析材料の1つとして引用されていただきます。)

【2CHOPO読者アンケート結果】リアルなあなた、教えて下さい!|2CHOPO 特集(2014年05月09日)

ー Q10. 同性婚について、賛成ですか?反対ですか? 賛成85%
ー Q11. 日本でも同性婚の法制化を進めるべきだと思いますか? はい83%

 

この数字を見た時に、土台は必要だと明確に感じました。土台というのは、異性愛者が当たり前のように当たり前のことを法的にできる(保障されている)部分は万人に満たされるべきだという視点です。非LGBT当事者が、グローバルな視点や見地だけを切り取り、「日本でも法整備が必要だ」と主張することに一種のおこがましさを感じていました。必要のない人には必要がない土台なのかもしれませんが、それは現行法律を享受する異性愛者も同様です。行使するかしないか、使うか使わないかは本人が決めればいいだけのことです。

 

六法全書 平成26年版

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アライという括りは正しくありません。役に立ちたいという偽善者的なアプローチも行いません。ストレートにはストレートなりの悩みはあります。ゲイにはゲイの悩みもあるでしょう。ただ、悩みの末に講じられる手段が限られているのであれば、それは追加、修正していくべきだと考えています。僕は、とあるイベントでみた「LGBTS(ストレート)」という言葉並びと、概念、そしてそのテーマ性に感嘆しました。キャッチフレーズひとつでここまで一体感を抱くことができるのかと心を踊らせました。

 世界は広い、人間も多く存在する。人はいろいろなことを思考し、時に争うだろう。しかし、多様であると理解できた時に、心の広がりと、笑顔の裾野は自ずと広がっていくだろうと期待しています。

 

同性愛と異性愛 (岩波新書)

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開かれたイメージ、乖離する現実。

世界にはこんなにも活躍するゲイがいることをご存じだろうか? ここでいうゲイとは、広義でLGBTの人々を指すが、登場する33人はそれぞれのジャンルのトップクラスに君臨しながら自らのセクシャリティを開放し、グローバルな活躍を見せるパワーゲイだ。フィールドは政治、経済、スポーツ、ファッション、カルチャーシーンと幅広い。これは、もちろんゲイだから特別な才能があるということを意味するものではない。才能ある人々のなかには、こんなにもゲイがいるということ。そこからLGBTマーケットへの理解が始まる。

 

世界をリードする最強パワーゲイ33人! | GQ JAPAN (2011年03月24日)に触れた時、(個人的には)確かに、LGBTという言葉は聞き慣れないが、ゲイ、レズビアンは、欧米(概ね日本以外というセグメント)においては、カミングアウトは当たり前の行為として社会に定着し、そこには、セクシャリティを越えた、パーソナリティを許容する文化が存在していると感じていた。大げさに言えば、LGBTが率先してコミュニティやフォロワー(ユーザー・大衆)を牽引し、大きなインフルエンサーとして、トレンドを牽引していると認識していたとも言える。アップル社CEOのティム・クック氏とかね。

 

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ところが、それから数年経った今、ゲイのCEOはなぜ少ないのか? | The New York Times | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト この記事に触れて愕然とした。

 

だが大きな例外が少なくともひとつある。企業だ。規模で見たアメリカのトップ1000企業で、同性愛者であることをオープンにしている最高経営責任者(CEO)はほとんどいない。

 

 エンタメ、スポーツ(プロスポーツもさることながら、オリンピックにおいてもカミングアウト事例は顕著だ)、アーティストというカテゴライズにおいては、カミングアウトした、しているというニュースをよく耳にするし、その認識は間違いないだろう。また、企業においては、ニッチ(アメリカ規模においては意外と大きい)マーケットとCSR(企業の社会的責任)、サスティナビリティの観点からLGBTの(積極的)採用を進めている。もしくは、企業イクオリティ指数(米NGO "The Human Rights Campaign")によって可視化されるというストラクチャーがある。私は、この2点において、LGBTをめぐる環境、殊に職場環境は素晴らしいものだと決めつけている部分があった。つまり、欧米と日本という文化的な体系は考察に値するものの、希望的観測として、日本社会における職場環境、および企業姿勢、そのスタンスが、いつか欧米のように変革する時が来るだろうという淡い期待を抱いていたわけだ。

日本においては、少なくとも政治、経済、スポーツ、ファッション、カルチャーシーンというフィールドにおいてLGBTであることを公言、カミングアウトしている人は少ない。カミングアウトすることの意味と重さ、日本におけるLGBTに向けた企業環境の整備、LGBT雇用をスムースにするための施策、そこに関わる法整備。そして、それ以上に必要な(非LGBT当事者側の)理解と認知促進。個人主義集団主義的な文化的背景、価値観なども交えて以降考察していきたい。

 

ベスト・オブ・リッキー・マーティン

ベスト・オブ・リッキー・マーティン

 

  

 

見つめられるのか、見過ごされたままなのか。

この数年、日本のLGBT団体と提携し、東京国際レズビアン&ゲイ映画祭 (TokyoLGFF)や、Tokyo SuperStar Awards(TSSA)、Tokyo Rainbow WeekなどのスポンサーとしてLGBT関連イベントを牽引するイタリアの高級車ブランド、アルファロメオ

 

 

日本市場でのシェアが0.1%にも満たない高級車「アルファロメオ」は、市場の約90%を占める日本車のメーカーと同じマーケティングをしても勝ち目はないという現状を克服するために、大半の日本企業が見過ごしている消費者グループに働きかけることにしたそうだ。それが、LGBTと呼称される性的(セクシャル)マイノリティーズである。

ー アルファロメオに乗ることは、アイデンティティに関わること。それは自分らしくあることと同義であり、自分自身で選択することにブランド価値や理念がある。

日本のマーケティング担当者はこのように言っていたと記憶している。洗練されたセクシーさと、情熱的な上品さを兼ね備えたブランドイメージが、個人的に思うLGBT層のイメージとシンクロしているとは感じている。

スポンサーとしてのイベント露出や、ブランドロゴ入りの赤いコンドームを配布するなどの地道な活動は、少なくとも「アルファロメオLGBTイベント」という印象と認知を決定づけており、マーケティング始動以降の販売台数も、前年の販売台数に比べると約2.5倍に急増したそうだ。しかし、これがマイナーチャンジなどに付随するセールス拡大なのか?LGBTをターゲティングした結果なのか?には個人的に疑問が残る。それは、LGBT人口比、人口比にみる年齢比、所得傾向、イベント参加比率、ソーシャルでのマーケティングとその認知など考察すべき点を、私自身が知り得ていないからだ。少なくとも、非LGBT当事者に向け、アルファロメの献身的なマーケティングアプローチについて話しても知らない人が多数を占める。無論、国産メーカーであるトヨタやスバルが、北米においてLGBT向けのマーケティングしている事実もこれらの人々は把握していない。

大半の日本企業が見過ごしている消費者グループ。アルファロメオをはじめとする外資企業の市場アプローチには、一定の利はありそうだ。しかし、諸外国にてマーケティングを展開している日本企業が、そこではLGBT層に着目している現実があるにも関わらず、殊に日本において、そのような動きに転換していかない現状については、見極めていく必要もあるのではないか。

LGBTに差別的な職場環境は、ゲイのみならずストレートからも敬遠される風潮を持つアメリカ。ゲイに寛容な職場を作ろうとすると、ストレートから反感を買うという時代は終焉しつつある。もはや欧米では、LGBTと呼称される性的(セクシャル)マイノリティーズは、あたりまえの存在なのだ。

同性婚などの法整備や、企業平等指数でのランク付けの定常化により、企業は競い合うようにLGBTフレンドリーになろうとしている。総人口の5〜10%と言われる巨大なLGBTマーケットへ向けたマーケティングと囲い込みや、環境、社会、経済的観点でのサステナビリティとして、人材と競争力の確保が定常化している。トヨタなどの日本の大企業もアメリカではそのように振る舞っている。市場が先か?政治(法整備)が先か?まるでタマゴとニワトリ論のようだが、先行性にメリットがあることに間違いと思うが、このイタリアの高級車ブランド、アルファロメオの動き方に、私は注目していきたい。

 

 

第23回東京国際レズビアン & ゲイ映画祭(TILGFF) / TokyoSuperStarAwards | TSSAオフィシャルサイト / Tokyo Rainbow Week 2014(東京レインボーウィーク2014) | 『Tokyo Rainbow Week 2014』は、セクシュアル・マイノリティの人たちが、より自分らしく前向きに暮らしていくことのできる社会をみんなで応援し、サポートする週間です。

大きな数字、されどそれは数字だ。

2012年に、電通ダイバーシティ・ラボが、約70,000 人を対象にスクリーニング調査を実施した結果から算出された「5.2%」という数字が、日本におけるLGBTの数とされ、現在に至るまでの通例だあり、ビジネスにおける一定の指標となっている。

5.2%という数字をどう捉えるか?現在の消費税率8%よりは低く、その他、非LGBT当事者が94.8%も占めていると考えると、数字としては小さく見える。でも、左利きの人と同じぐらいの割合だとか、クラスに1人か2人はいたんじゃないかな?なんて伝え方をすると、案外多いという印象を抱く場合も多い。単純に日本の人口を1億2千万人だとすると、600万人はその対象者であるという計算となる。ここからは細分化の作業だ。年齢、性別、地域などからLGBTを分別し、ビジネス転化可能な数字かどうかの根拠を探る。

その推計市場規模は……アメリカで約77兆円、イギリスで約7兆円、そして我が日本でも約6兆円で、世界全体では軽く100兆円を超えるとされる。今、世界のビジネス界でもっとも注目を集めているのが、LGBT市場なのである。

100兆円市場! 我らの隣人「LGBT」を見よ セクシュアル・マイノリティを学んで儲ける【上】:PRESIDENT Online - プレジデント(2014年5月19日)

 

ゲイ・マネーが英国経済を支える!? (新書y)

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LGBT市場は大きい。今でもそう思っているし、そう思い続けたい気持ちもある。しかし、これは日本のLGBT消費者による年間消費は5.7兆円、もしくは、6.6兆円だったりするだけであり、これが直接的に何かのビジネスに流用できる数字かどうかは不確定なままだ。普通に生活している上で、幾らかの余剰財を自分自身のために使用しているだけとも言えるわけだ。

ニューヨーク州同性婚を認める州法が成立してから約1年が経つが、ニューヨーク市では過去1年間で8000組以上の同性カップルが結婚し、その経済効果は2億5900万ドル(約202億円)に上るという。市当局者が24日明らかにした。

同性婚の経済効果、NY市では年間200億円以上 | 世界のこぼれ話 | Reuters (2012年07月25日)

 

このように、法整備などによる新しい消費の創造はもちろん可能であるし、現実的に経済効果は表れている。しかし、日本はまだ法整備されてないのが現状だ。LGBTとは、ライフスタイルそのものであり、いわゆる「オタク文化」に起因するアキバ市場とは大きく概念が異なる。

僕は少なくとも数字に踊らされていたひとりだと思う。踊らされたという言い方はふさわしくない。言うなれば、現状の指標として数字を過大評価しようとしていた。しかし、この数字を例えば、経済を支えるまでの市場経済までに発展させていくためには、お国柄、文化の質の考察、そして、マジョリティとされる非LGBT当事者への理解促進が欠かせない。無論、法整備もそのひとつだ。安易に並ぶ巨大な数字の本質に向き合うことと、LGBT当事者の本質に迫ることはイコールだ。多様性を理解することの深さが、未だにこの数字を「まな板の鯉」にしているひとつの要因だと思っている。ふわふわと掴み所のない数字と、企業はどう戦っていくのだろうか?何よりも明確なベクトルが必要なのは事実だろう。

 

アキバが地球を飲み込む日―秋葉原カルチャー進化論 (角川SSC新書)

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露出する言葉、LGBTの本質はどこに。

 LGBTは、セクシュアル・マイノリティを総称する言葉のひとつだ。レズビアン(Lesbian)、ゲイ(Gay)、バイセクシュアル(Bisexual)、トランスジェンダー(Transgender)、それぞれの頭文字からなる。

僕がその言葉を知ったのは、比較的新しく2年半だったように記憶している。そして、成長するLGBT市場をいう一連の記事を読み漁り、この市場の可能性について感嘆した思い出がある。

 

成長するLGBT市場 1.LGBT概観: マーケティング・ブレイン(2007年6月18日)

LGBTでなくても、今の時代は、みんなが少しずつマイノリティな部分を抱えて生きて、そして消費している。そのことが時代の移り変わりと共にカミングアウトすることに抵抗が薄れ、インターネットというOne to Oneメディアの浸透で、マイノリティに対しても、ロングテールな販売促進が可能になってきた。特定のマイノリティをターゲティングできるだけでなく、マイノリティ自身がバイイング・パワーとなり、ポリティカル・パワーとなってきた。

成長するLGBT市場 2.LGBTのドライビング・フォース: マーケティング・ブレイン(2007年6月19日)/ 成長するLGBT市場 3.LGBTのマーケティング・スタディその1: マーケティング・ブレイン(2007年6月20日)/ 成長するLGBT市場 4.LGBTのマーケティング・スタディその2: マーケティング・ブレイン(2007年6月21日)/ 成長するLGBT市場 5.LGBT市場攻略アプローチ: マーケティング・ブレイン (2007年6月22日)

 

ゲイ&レズビアン市場の可能性 - インターネットコム(2002年2月6日)

ゲイ&レズビアン広告市場は、一般市場に比べて際立った特徴がある。マーケッターにとって最も重要なのは、ゲイ&レズビアンの生活水準が高いことだろう。 

 

2012年5月、米ABCテレビのインタビューの中でバラク・オバマ大統領が、歴代米大統領として初めて同性婚を支持した。LGBTに対する立ち位置を明確にしたことは、大統領選の争点のみならず、世界中の多くのLGBTを勇気づけ、歴史的にも大きな転換を構築したと言える。同性婚を認めない結婚防衛法(Defense of Marriage Act)は違憲と位置づけた連邦高裁の判決、そして、ロシアの「同性愛プロパガンダ禁止法」をめぐり、ソチ五輪開会式への出席を仏米英独首脳陣が見送るなど、LGBTが少なくとも人権という問題以上に国際的な論点として浮上した始めたことは事実だ。

 

週刊 東洋経済 2012年 7/14号 [雑誌]

週刊 東洋経済 2012年 7/14号 [雑誌]

 

 

日本においては、2012年7月9日発売の経済誌『週刊ダイヤモンド』と『週刊東洋経済』が2誌ともLGBT特集を掲載。LGBTカルチャーにスポットを当て、人種やバッググラウンドの違いを乗り越え、社会とLGBTの架け橋を築いた”スーパースター”たちを称える「Tokyo SuperStar Awards 2012」にて、メディア賞を受賞するなど、経済誌としてLGBTの市場をどう攻略するか、LGBTの地位向上を図る企画に大きな反響があった。

 

週刊 ダイヤモンド 2012年 7/14号 [雑誌]

週刊 ダイヤモンド 2012年 7/14号 [雑誌]

 

 

そして、今や日本だけでも結構な頻度でLGBTというワードをテーマにした記事が掲載されている。LGBTは僕が言葉の意味を知り始めた時よりも格段に露出し、浸透し始めている。

 

 LGBTを制するものが不況を制す! | GQ JAPAN(2011年3月24日)

特徴的な価値観をもち、ネットワークもある。エッジも効いており流行に敏感。その分アプローチはしやすい。波及力のある市場として、LGBTは有望な市場といえるのではないでしょうか。

まず理解すべきは、エンタメ、カルチャー、風俗といった従来のアダルトコンテンツ以外にも大きな市場があるということです。その存在感は日本でも高まっています。そんな彼らの特徴は、コレが好き、という強さがあること。これがビジネスのヒントになると思います。

LGBTの現在│Special│Billboard JAPAN(2013年12月4日)

日本のLGBT人口は、全人口の5%程度(2012年、電通総研)消費市場は年間6兆円(日経ビジネス2.26号の掲載)に達すると言われている。6兆円は国内の酒類市場に匹敵する規模で、「日経ビジネス」「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」などがいち早く特集を組んできたのは興味深い。この眠れる市場にマーケティング担当者は切り込むべきという一方で、「LGBTを応援するには、理由がいる」「会社の名前を出すのは判断に迷う」といった声もまだ多く聞こえる。しかし、LGBT市場が77兆円と推定されるアメリカでは、保守層も多いが、「市場価値」を見出されることで、LGBTの環境が大きく変わって来た。今後、日本も市場価値を見出されることで前進すると予想されている。

企業はCSRとしてどこまでLGBTを尊重すべきか | CSRのその先へ(2014年2月21日)

ただ、世界的な流れも含めて、企業のCSR担当者は情報収集を欠かさないほうがよさそうですよ、って話でした。人権に関するCSR活動は世界のトレンドですので、2014・2015年は日本でも色々動きがあるかもしれませんね。

100兆円市場! 我らの隣人「LGBT」を見よ セクシュアル・マイノリティを学んで儲ける【上】:PRESIDENT Online - プレジデント(2014年5月19日)

その推計市場規模は……アメリカで約77兆円、イギリスで約7兆円、そして我が日本でも約6兆円で、世界全体では軽く100兆円を超えるとされる。今、世界のビジネス界でもっとも注目を集めているのが、LGBT市場なのである。

なぜソフトバンクは性的マイノリティに愛されるのか セクシュアル・マイノリティを学んで儲ける【中】:PRESIDENT Online - プレジデント(2014年5月20日)

LGBTにフレンドリーな企業=女性や障害者やそのほかのマイノリティにも優しい、というイメージを人々は抱いています。それは人材確保だけでなく、商品などもっと広い範囲のイメージアップにも繋がる。従来は、理解不足のためLGBTという言葉自体がネガティブに捉えられる、というリスク管理が働いてしまっていたのかもしれませんが、今後は、むしろLGBTにフレンドリーでないということがネガティブになる、という時代にシフトしていくと思います。

レズビアン、ゲイ…LGBTに関心高まる 日本人の5%、市場規模5.7兆円 (1/5ページ) - SankeiBiz(サンケイビズ)(2014年05月26日)

日本でも同性婚などの法整備が確立すれば、大きな市場が広がる可能性がある。だがそうした動きは非常に弱い。元電通総研の研究主席で消費生活評論家の四元正弘さんは「日本のLGBT層はまだニッチ(隙間)市場。まずは偏見を持たずにどんな人たちかを知ることが大事で、その先にビジネスの兆しを見いだせるはず」と話している。

 

LGBTはライフスタイルそのものだ。衣食住に関するライフハック、カミングアウト、結婚、生き方、子育て、将来像など社会的視座はもちろん必要な切り口だろう。政治的な高鳴りなのか?市場経済的な高鳴りなのか?いずれにしてもグローバルな視点でLGBTが、LGBTと括られることのない社会創造は必要である。政治的な側面と、市場経済的な側面については、自らのアプローチをひとつのフックとして追々語ることになる。

言葉では補完できないセクシャリティの多様性。

簡単な伝達ツールであるがゆえに暴走するのが、言葉。

 

言葉(ことば)は、人間が話す・書くなどの行為をする事によって情報伝達手段となりうる、意味があるものの総称。心・気持ち・思い・考え等を表す手段の一つである。学術的分野では「言語」とも称されるが、日本語で「言葉」というと、言語の中で用いられる語を意味することも多い。via. 言葉 - Wikipedia

 

情報伝達手段であるからこそ、物事を簡単に捉えようと努めた賜物である。しかし、心や気持ち、思いや考えなどをそこに投影できるわけもない。「高い!」とだけ表現された時、物の高さなのか、値段のことなのか、それともモチベーションなどの気持ちの部分を指しているのか、漠然としている。対面コミュニケーションや、電話、チャットなど、ある程度リアルタイム性が確保される性質の伝達シーンがある場合、補足のやり取りで溝は埋められる。これがマスメディアに近しい、ワンウェイかつ大衆に一斉送信される類の情報となると、いわゆる補正は困難だ。

男と女という分別。生物学的な分別と社会的役割として期待されているロールとして存在する言葉。その役割は「男の子なんだから、泣くのをやめなさい!」「その振る舞いは女の子らしくない」などの表現そのままにすっかり文化として根付いている。2つに分別することで表現が容易であるとともに、対立構造を作りやすい。しかし、殊にセックス、ジェンダーは、2つの枠組みだけに収まるものではなく、そこからはみ出る人達が存在する。はみ出た人達はマイノリティと称される。男と女という言葉を用いながらも、それを適切に補完し、言葉自体を慎重に紡いでいかなければ、その人自身を明確に表現することはできない。いや、表現することでの誤解を避けるなら、それでも不十分だろう。

LGBTEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZABCD・・・多様に、いや無限に存在するセックス、ジェンダーセクシャリティ。そこに性癖なんかを加えると果てしない。今は言葉をうまく紡ぎながら多様性のあり方について表現していくことが求められる時代だと思う。言葉として表現していかなければ、多様性を理解し得る社会にはなり得ないし、文化として成熟しない。多様性の数だけ、言葉が用意され理解促進が進むのか?それともセクシャリティ的な発想が多様性を認め、大きな多面的な概念に転化するのかわからない。しかし、今言えることは、セクシャリティではなく、パーソナリティと向き合うことが大事なんだと思う。だから、向き合おう。言葉の壁を越えて。

 

百合のリアル (星海社新書)

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